DISC REVIEW kasuppa/the Hot New Product
神戸出身のGuVo(♂)、Ba(♂)、DrVo(♀)の3人組。
2007年に神戸の大学内サークルにて結成され以降、神戸、大阪を中心に活動。
アルバムから何曲か抜粋して感想を。
#1「Fair」
ともすれば激情HCのリフの様な激しさを持ちこのアルバムの幕開けを飾る。
#2「Clod」
ヤブキ(VoGu)の小気味良いカッティングにナカニシ(Ba)のJoy Divisionを彷彿とさせるベースラインが絡む。1曲目の大げさまでな熱にカウンターで打たれる冷徹なサウンドに存分に沈められる
#6「Ordeal」
バンドの紅一点であるフサコがVOCALを取る。Ordeal(=苦しい試練)を投影する叙情的なサウンドに透明感のあるフサコの声が絡む壮大な曲だ。
#9「To Forget The World`s End」
アルバムを閉める最終曲はSonic Youthよろしく、これでもかとノイズの大洪水を浴びせる。バンドの攻撃性に改めて再確認させられると共に、「次」への期待をも抱かさられた。
Shoegazerというカテゴリーを愛する者は多い。
近年、長らくその代名詞として君臨したmy bloody valentineの再結成が話題を呼び、またこのカテゴリーに新風を起こしたDeerhunterの来日の際の盛況ぶりには、この長年続くShogazerというカテゴリーの世代を越えた熱を感じた。
当然ライブハウスでも、長年ディレイとディストーションを踏み轟音を鳴らし続けるバンドを日に必ず1バンドは見かけるし、また同時に新しいバンドが量産され続けていると感じる。そういった状況に少々食傷気味だった頃、kasuppaの音と出会った。
kasuppaは熱や感情的なものは受け取りづらいかもしれない(ライブも淡々とこなすし)。しかし彼らが紡ぎ出す音に、仄かに高揚する静謐な炎を確かに感じた。
もしかしたら彼ら自身はShogazerに影響を受けていないかもしれないし、その括りにカテゴライズされることを嫌うかもしれないが、是非とも今後有象無象が溢れるシーンに新風を起こして貰いたいと感じる。
DISC REVIEW otori/I WANNA BE YOUR NOISE
都内で活動するVocal guitar bass drumの4人組の全国リリース一作目。
2010年結成から半年後に東京BOREDOMのアフターパーティーに出演するなど、一部の音楽ファンから早くから注目されてきた彼らがDEMO音源を挟み遂にアルバムをリリース。
紅一点のコバラサエから放たれる言葉は内省的ながらも聴く者の言葉を突き刺すハードコアの響きがあり、バンドの核である人物ヒノがノイジーなサウンドで彩を与え、ワングルーヴを基礎とした固く太い抜群のリズム隊ミヤタとハダが彼女を支える。
自らのサウンドをNo Waveと称する彼らだが、長らく東京のアンダーグラウンドシーンを支えてきたboston crusing maniaやtacobonds等のオルタナティブシーンや、彼らが多感な時期に吸収したであろうYOLZ IN THE SKYやFLUID等の関西のゼロ年代オルタナの血を正当に受け継いでいる。
アルバムだが、前作「生成」の曲に加え新たに4曲が収録。一番の驚きだったのが一曲目の「反解釈」だ。今までの彼らになかった突き抜けたポップさがアルバムの幕開けを告げる。駆け抜けるように、しかし一曲一曲の印象はしっかり脳内に擦りつけられ、あっという間に一枚を聞き通した。
あらゆるリフ・フレーズが出切ったと言われる現在のバンドサウンドの中で、唯一無二という言葉を綴るのはあまりにも空虚かもしれないが、それでも「新しい音楽」を常に模索する欲望を持つ一音楽ファンとしては、彼らからその希望の光を見出したいという期待を込めて、この言葉を使いたいと思う。
東京では注目されているバンドだが、まだ西ではまだまだ無名に近い。大阪のレーベル「ギューンカセット」からのリリースを機に、是非西日本での活躍の場を広げて欲しいものだ。