DISC REVIEW otori/I WANNA BE YOUR NOISE
都内で活動するVocal guitar bass drumの4人組の全国リリース一作目。
2010年結成から半年後に東京BOREDOMのアフターパーティーに出演するなど、一部の音楽ファンから早くから注目されてきた彼らがDEMO音源を挟み遂にアルバムをリリース。
紅一点のコバラサエから放たれる言葉は内省的ながらも聴く者の言葉を突き刺すハードコアの響きがあり、バンドの核である人物ヒノがノイジーなサウンドで彩を与え、ワングルーヴを基礎とした固く太い抜群のリズム隊ミヤタとハダが彼女を支える。
自らのサウンドをNo Waveと称する彼らだが、長らく東京のアンダーグラウンドシーンを支えてきたboston crusing maniaやtacobonds等のオルタナティブシーンや、彼らが多感な時期に吸収したであろうYOLZ IN THE SKYやFLUID等の関西のゼロ年代オルタナの血を正当に受け継いでいる。
アルバムだが、前作「生成」の曲に加え新たに4曲が収録。一番の驚きだったのが一曲目の「反解釈」だ。今までの彼らになかった突き抜けたポップさがアルバムの幕開けを告げる。駆け抜けるように、しかし一曲一曲の印象はしっかり脳内に擦りつけられ、あっという間に一枚を聞き通した。
あらゆるリフ・フレーズが出切ったと言われる現在のバンドサウンドの中で、唯一無二という言葉を綴るのはあまりにも空虚かもしれないが、それでも「新しい音楽」を常に模索する欲望を持つ一音楽ファンとしては、彼らからその希望の光を見出したいという期待を込めて、この言葉を使いたいと思う。
東京では注目されているバンドだが、まだ西ではまだまだ無名に近い。大阪のレーベル「ギューンカセット」からのリリースを機に、是非西日本での活躍の場を広げて欲しいものだ。